「愉しい非電化C 修道院の非電化野菜貯蔵庫」
非電化工房の藤村靖之氏の講演の続きです。
藤村氏は、福岡にある修道院に野菜貯蔵庫を作りにも行っている。
そこの修道院は、自給自足で、昼はシスター達が畑を耕している。
水も敷地内で再利用して循環型の暮らしを行っている。
電気もあまり使っていないようで(もしかしたら無いのかも知れない) 、エアコンなんか大っ嫌い。
しかし、某有名建築家が設計したその修道院は、夏はかなり暑くなる作りになっていた。
そこで、夏の夜は寝苦しいので、コンクリートの土間の上に布団を懸けないでみんなで寝転がっているそうだ。
なんせ、シスターだけに畑仕事中もTシャツに短パンと言うわけにはいかない。肌の露出をしないように長袖を着ているのだそうだ。
しかし、いくらエアコンが嫌いでも、採れた野菜は冷蔵庫に入れて置かないと腐る。
彼女達はそこがどうしても納得できなかったようだ。
冷蔵庫なんて出てきたのはここ30年ぐらいの話。
「昔は冷蔵庫なんてなかったわよね?」「どうやって暮らしていたの?」
文明の生活に慣れてしまうと疑問に思わなくなってしまうが、
昔ながらの生活を送っている彼女達には疑問に思って当然かもしれない。
そこでどこをどう調べたのか、藤村氏のところへ連絡が入った。
藤村氏は彼女達に「非電化野菜貯蔵庫」を提案した。
「ストローベイルハウス」と言うものがある。
「ストロー」はワラ。
「ストローハット」=「麦わら帽子」の「ストロー」だ。
その「ストロー(ワラ)」をぎゅうぎゅうに固めて40×50cm位のブロックを作り、それを柱と柱の間に積み上げて両側を土壁で覆った作りになっている家で、断熱性能が高い。

国名は忘れたが、海外で発祥したそうだ。
今回の「非電化野菜貯蔵庫」にはその「ストローベイルハウス」の外壁を採用することにした。
条件として、野菜を保管するために室内を20℃以下に抑えなければいけない。
まず、貯蔵庫内部にたまった熱を外に逃がしてやる必要がある。
そのために「放射冷却」という原理を利用している。
基本的には「非電化冷蔵庫」と同じ仕組を取っている。

「放射冷却」とは、星が見える位の夜空に巨大な天窓を開けて熱を逃がしてやるというシステムだ。(昼は屋根で覆って、熱を中に入れないようにする。)


そして、「保冷材」として、500mlの水を入れたペットボトルを使っている。なんでも、水は比熱が最大なので、「保冷材」としてはぴったりということだ。

ここに一つ工夫がある。
保冷効果を高まるために水に色を付けている。
各ペットボトルに墨汁を一滴ずつたらして黒くしている。
また、見栄えを良くするために使うペットボトルはボルビックに統一している。
そして、屋根には断熱塗料を塗る。
あと、湿気の問題がある。
このための工夫についても紹介します。
まず「エジェクター煙突」という断面がT字型の煙突を取り付け、 この上の部分に風が通ると中の空気を吸い上げるように設計されている。
床下にも「非電化換気装置」を取り付けて、湿気が高い時には自動的に閉まり、乾燥してくるとふたが自動的に開くというシステムを取り付けた。

これは、ナイロンが湿気によって伸び縮みする性質を利用して、ナイロンの紐とバネの組み合わせによって、湿度があると閉まり、乾燥すると開くという自動的な動作を可能にしているのだ。
しかも耐久性はナイロンの耐性だけに拠るので、機械式とは違って、20〜30年は持つ。
床下換気に電気製品を使った場合、マイコンとセンサーの組み合わせで2年ぐらいしか持たない上に値段が高い。
「非電化換気装置」を採用することによって、巨大な電気式冷蔵庫を作った場合と比べても最終的に120万円分安くなったそうだ。
壊れてもすぐ直せるのも長所である。
「電気を使わなくてはできない」というのは思い込みだと藤村氏は言う。
また、この「非電化野菜貯蔵庫」はワークショップ形式でやっている。
つまり、人件費が掛かっていない。
藤村氏が声をかけると400数十人集まってきて、この貯蔵庫造りに 参加したそうだ。
すごい人脈だ。
と同時に、こういう作業をやりたがっている人は多いということだ。
保冷材として使ったボルビックのペットボトルも、ワークショップの 参加条件に「一人2本以上持ってくること」というのを付けて、400数十人から持ってきてもらったそうだ。
外壁となるストローベールをつくる装置も藤村氏の考案。
工事現場でコンクリートの型枠として使うベニヤ板を使って箱状にし、てこの原理を使って圧縮する。
電動の「ストローベーラー」は500万円ぐらいするのだが、それで作ったストローベールはふにゃふにゃ柔らかいらしい。
手作業のストローベールだとカチカチに固まるのだそうだ。
ストローベールの外側の土壁には「地元」の土を使うのが基本らしい。
粘性が足りない場合は稲ワラを短く切って混ぜると粘り気がでるそうだ。

土壁の外側には湿気対策で漆喰を塗り、さらに着色して完成。
ここで、ちょっと話を戻す。
「電気を使わなくてはできない」というのは思い込みというところで、海外との比較を出されたのでそれについても書いておく。
日本と海外の電気消費量を比較すると、1世帯あたり、日本はドイツの2.5倍使っている。
では、ドイツ人の2.5倍幸せか?
そんなことはない。
イギリス人と比べても、1.7倍使っている。
では、イギリス人の1.7倍幸せか?
そんなことはない。
電気を多く消費したからって幸せになるわけではない。
だったら、減らすことは十分に可能なのだ。
今の世の中は、一部のお金持ちが幸せになるための世の中だと藤村氏は言う。
次回に続く。